
― 趣味は?
焚き火が好きです。
家族でキャンプに行き、火を起こして、焚き火を眺めている時が幸せです。
あとは、語源・字源を調べること。
自分が話した言葉や、書いた文字の源を調べてみると、思った以上の意味が出てきます。
すると、話した言葉、書いた文字から、自分でさえ気づいていなかった、
自らの潜在的な気持ちや価値観に気づくことがあり、おもしろいです。
― 何故今の職を目指しましたか?
今の職に就いたのは、独立開業した時です。
それまでは、「理学療法士」という職でした。
今は、整体だるま堂という屋号にちなんで「整体師」と紹介されることもあります。
けれど私自身は、今の職を「中西 眞と名付けられた、ひとりの人」だと思っています。
弱いもので、そう思っていないと、「療法」という体系に頼り、理論や技術に
人を当てはめて解釈しがちなのです。
本当に、さんざん、そういう事をやってきました。
単なる理論・技術の当てはめではなく、この私が、その時、その場で、
目の前の人(を含む自然)を、よりよく観たい。
逆に、そう言えるくらいまで、選りすぐった技術を磨きたい。
独立するには未熟すぎる時期でしたが、そのような理由で、
「ひとりの人」という今の職に就きました。
― 最近感動した話、または驚いた話など
ヒトの胸骨・鎖骨・肩甲骨(胸と肩のあたり)の形と動きを、ネズミやサルのそれと見比べていて、
「あ!ひょっとして、そういうこと…!?」と、驚きました。
ヒトが、どんな環境、どんな経緯を経て、今の形と動きに至ったのか。
「来し方」を垣間見る気がしたのです。
こうして「来し方」を知ると、じゃあ、どうすれば身体を損なわず、より良くなっていけるのか。
「行く末」の理解も少し、深まります。
こういった驚きについては、講習会でもお伝えしていきたいです。
― 講習会では、これからどのような事を伝えていきたいですか?
私自身は、身体の「来し方」や「そもそも」に興味があります。
なので、それを求める中で経験した事、自分なりに納得した事をお伝えしていきたいです。
あと、これまで子どもと関わるお役目が多かったせいもあり、赤ちゃんの発達は、よく参考にします。
それが唯一の理想というわけではないですが、「来し方」を知る手立ての一つとして、示唆に富んでいます。
ちなみに、講座名の「触れて、みる」。
「みる」が平仮名なのは、「見、観、視、診、看」などの可能性を開いておくためです。
また、句点を取れば、「触れてみる」となります。
赤ちゃんの頃、そうしていたように、まずは世界に「触れてみる」ことで
自他を知っていくきっかけが生まれれば、と思います。
― 何か一言
TC Academyの講習会は、私が参加者なら目移りして困るほど、おもしろいものばかり。
とりわけ、「あたま語」と「からだ語」を聴き分け、話し分けるセンスを磨いていくのに、
うってつけの場だと感じています。
たとえば、「あたま」に描く快適さと、「からだ」に現れる快適さ。
「あたま」が願う丁度良さと、「からだ」の然るべき丁度良さ。
そのような違いを、自分なりに整理していく経験は、他ではなかなか出来ないものです。
また、決して「あたま」を否定せず、知性も「からだ」の働きとして認める講師・参加者ばかりで、
いつも驚き、学び、笑いに満ちています。
そのような場でお伝えするチャンスがあるのは、本当にありがたく、身が引き締まります。
― お薦めの本、映画など
白川静『字統』は、漢字の成り立ちを探る字源字書。
気が向いた時に引き、読み物として触れるのも、お薦め。
また後年、中高生向けに編まれた『常用字解』。
よりコンパクトながら、読みごたえ十分です。
とりわけ、冒頭に白川先生が寄せた文章を読むたび、心が動きます。
他に、整体の野口晴哉先生と、体操の野口三千三先生の著作。
同じ野口姓のお二人が、同時代にそれぞれの方途で
人、命、自然について探究されたのは、本当に偶然なのでしょうか。
野口整体、野口体操いずれも、私は体系や方法論を学んだわけではありません。
けれど二人の天才が、世界の何処を、何故、
どのように観ていたのか、という事への興味は尽きません。
野口晴哉『風邪の効用』、野口昭子『回想の野口晴哉』、
野口三千三『原初生命体としての人間』『ことばに貞く』
などをお薦めします。
中西 眞(なかにしまこと)
保有資格:理学療法士
急性期病院、整形外科クリニック、学校保健活動などに従事した後、2018年10月、整体だるま堂を開業。
最近の関心事は「手の知性化」。施術、武術、火起こし技術などを通じて、「触れる」ことを磨いている。